【量子化学】古典力学と量子力学の違いを解説!量子化学へも応用できる!

量子化学

今回は大学で学習する量子力学・量子化学を大まかに見ていきながら古典物理学と量子力学の対比を通して、2つの分野の基礎的な考えを押さえましょう。学習にも取り掛かりやすくなること間違いなしですよ。

化学が苦手な男の子
化学が苦手な男の子

大学での学習は量子化学に限らず、途中で「何をしているのか」、「何がしたいのか」が分からなくなるのは「あるある」ですからね。笑

shiki
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まあぶっちゃけ量子化学については大きな流れさえつかめればなんてことありません。ただ、応用範囲が広いので難しく見えてしまうんですよね…。なのでなるべく簡潔にいきましょうか。

古典力学と量子力学をそれぞれ解説

まず「量子力学」がどういった学問なのか?ということについてみていきましょう。単純に言えば「古典力学では表せないようなミクロな現象の表現」です。

化学が苦手な男の子
化学が苦手な男の子

ん?何を言っているのかさっぱりわかりません。

shiki
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そう慌てないでください。順番に「古典力学」と「量子力学」から見ていきます。量子化学は量子力学を化学へ応用したものだと思ってください。

古典力学

古典力学は「ニュートン力学」と「相対論」からなる力学のことです。詳しい説明は省きますが、とても分かりやすく単純に表現すると、古典力学は「物体のエネルギーを連続的なものとして扱う学問」です。

shiki
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つまり、高校までの理科(物理)で学習する小球が転がるような運動や振り子の運動、電磁気力などを考えるのは「古典力学」ですね。

高校で物理を学習したときに運動エネルギーや位置エネルギーが出てきたと思います。このエネルギーは連続的に変化したはずです。このような連続的なエネルギー変化が古典力学の1番の特徴です。

化学が苦手な男の子
化学が苦手な男の子

たしかに作ろうと思えば、速度や位置エネルギーを変えて色々なエネルギー値を持った物体が作れますね。

shiki
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古典力学だけを見ていてもあまりピンときませんね。量子力学の解説までこの「連続的」というキーワードを覚えておきましょう。

また、普段の生活で目にする現象はほぼすべて連続的なものです。例えば、特定のスピードでしか走れない自動車や動作の重いパソコンのような動きをする振り子は見たことありませんね。

このように目に見えるような現象を数式で記述するときには古典力学で十分なことが多いです。

化学が苦手な男の子
化学が苦手な男の子

温度も連続的な変化なので、分子の熱運動も温度という観点からは古典力学で十分そうですね。

量子力学

対して「量子力学」はどうでしょうか?量子力学の1番の特徴は「物体の持つエネルギーを離散的なものとして扱う」ことです。つまり物体は飛び飛びのエネルギー値しか持てないのです。

shiki
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例えるならば、5℃刻みの温度でしか存在しない気体などですかね。実際にはそんな気体は存在しないのですが、イメージしやすいかと思います。なので5℃の次の値は10℃しかなく、7℃などの温度はとれないということです。

この飛び飛びの値については電子や原子といったミクロな世界でよく見られ、目に見えないほど小さいものを扱うときにしか考えません。下の記事も一緒に読んでみるといいでしょう。

量子力学が古典力学に比べてよくわからない、理解しにくい理由の1つとしてミクロな世界すぎてイメージが持てないということがあったりしますね。

化学が苦手な男の子
化学が苦手な男の子

2つの違いについておおまかにわかりました。このエネルギーの扱いの違いが実際はどのように影響してくるのですか?

shiki
shiki

それでは次はこの2つの理論の根幹をなす数式を見ていきましょう。実は古典力学は2つ、量子力学は1つしかありません。

古典力学と量子力学の違い

この2つの考え方を方程式の面から見ていきます。数式を解くわけではないので「へ~」くらいの軽い気持ちで大丈夫ですよ。

古典力学の基礎

まずは古典力学の基本となる考え方から見ていきましょうか。もう1度古典力学の最大の特徴である「エネルギーが連続的」であることを念頭に置いておきましょう。

古典力学の基礎方程式

古典力学については基礎となる方程式が2つあります。1つは高校でも学習した「運動方程式」、もう1つは「光速度不変の原理」ですね。

\(F=m\frac{d^2x}{dt^2}\)

どの慣性系から見ても真空中の光の伝播速度は一定

化学が苦手な男の子
化学が苦手な男の子

あれ、原理ってことは数式ではないのですか?

shiki
shiki

まあ基礎となる「考え方」といった方がこの場合は近かったですね。理系の人ははもしかしたらすでに教養科目で扱っているかもしれません。

例えば運動量保存則やエネルギー保存則、振り子の周期といったいわゆる公式は運動方程式から導出できますし、時間や空間の伸び縮みといった相対論的な話は光速度不変の原理から導出できます。

気になる人は高校物理の教科書を見直してみるといいでしょう。気体中や液体中、固体といった環境の違いによって用いる物理量が異なるだけで、すべて運動方程式から導出できることに気づくはずです。

shiki
shiki

もちろん、実験結果から導出した公式もあるので「出てくる公式全て」ではないですよ。例えばクーロン力による引力・斥力の公式などは実験からの導出ですね。

観測結果の正確性

「何のこと?」と思うかもしれませんが、古典力学が適用できる小球のような物体は位置と運動量(速度)は正確に測定できます。装置の誤差はあるかもしれませんが、原理的には正確に測定可能ということです。

shiki
shiki

これが電子や原子だと古典力学とは違った原理が適用されます。そのことは後ほど解説しましょうか。

量子力学の基礎

次に量子力学について考えていきます。古典力学との違いに注目すると良いでしょう。

量子力学の基礎方程式

量子力学の基礎となる方程式は「シュレディンガー方程式」です。名前だけなら聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。ここでは概要の説明にとどめるので実際の導出は下の記事を確認しましょう。

shiki
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ちなみにシュレディンガー方程式は以下のような形をしています。\(H\)はハミルトニアンと呼ばれる量、\(E\)はエネルギー、\(\psi\)は波動関数を表しています。

ハミルトニアンや波動関数については下の記事を参考にしてください。聞きなれない言葉が並んでいて難しそうに思えますが、いったんわかってしまえばなんてことないです。

シュレディンガー方程式が新しく出てきた経緯を簡単に説明すると「電子が持つ波動性と粒子性のどちらも取り入れた方程式が欲しかった」です。

化学が苦手な男の子
化学が苦手な男の子

なるごど。高校物理の教科書に「力学」と「波動」の2つの分野があるように、古典力学だとどちらかしか表現できないんですね。電子の二重性の詳しいお話をしましたよね。

shiki
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ここまでをまとめると量子化学の基礎方程式はシュレディンガー方程式であり、この式は電子の二重性を取り入れたものであるということになります。

量子力学における観測結果

量子力学が適用できるような物体に対してはなんと観測結果には必ず誤差が含まれてしまいます。実験装置による誤差ではなく、最初から正確な測定自体そもそもできないことが数式上で証明されているのです。このことを「ハイゼンベルグの不確定性原理」といいます。

shiki
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この原理は物体の位置と速度の観測に関する誤差を表しています。ここでは数式は載せませんが、気になる人はググってみましょう。

この実験結果からも量子力学と古典力学の違いがわかります。電子や原子を扱う場合は古典力学ではなく、量子力学を用いる必要があるのです。

2つをうまく使い分ける

ここで注意してほしいのは「古典力学」と「量子化学」は2つが互いに支え合っているような関係であるということです。小球の運動のような目に見えるような巨視的な現象は古典力学に従い、電子や原子といったミクロな現象は量子力学に従います。

shiki
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量子力学は古典力学の上位互換ではなく、ミクロな現象を説明できる理論です。なので物理現象に適用する方程式はその状況に応じて使い分ける必要があるのです。

量子化学とのつながり

さてここまで「古典力学」と「量子力学」の違いについてみてきましたが、最後の量子化学とのつながりについても考えておきましょう。

shiki
shiki

量子力学はミクロな物質についての物理学であることはわかりましたね?つまり、電子の動きについて考えることが出来るわけです。そして化学は電子の動きでほとんどが説明できます。

化学で扱う現象や反応は電子が深く関連しているので、量子力学を化学へ応用して電子の動きを正確につかむことで現象や反応を説明しようとするが「量子化学」というわけです。下の記事もぜひ合わせて読んでみてください。

今回の要点

今回は「古典力学」と「量子力学」の対比を通して、量子力学の全体像を解説してきました。学習する前に「何をしているのか?」について把握すれば内容の定着もしやすいでしょう。量子化学のような直観的には分かりづらい学問はなおさらですね。

化学が苦手な男の子
化学が苦手な男の子

結局は電子の動きを正確に把握することで、化学反応や結合といった現象を表したいということですね。

shiki
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そうですね。その電子の運動を表す方程式がシュレディンガー方程式というわけです。この方程式はほとんどの場合解けないので、なるべく実験に近い結果を与えるような近似を取り入れて計算を行います。

参考文献


量子化学ー基礎からのアプローチ(真船 文隆)

詳解 量子化学の基礎(類家 正稔)

はじめての量子化学 量子力学が解き明かす化学の仕組み(平山 令明)

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