【量子化学】3次元の極座標変換!量子化学でも大活躍!

量子化学

こんにちは。今回は分子を取り扱う上では絶対にはずせない極座標表示についてみていきましょう。2次元の場合は高校数学でも取り扱いますし、3次元になっても基本的なことは何も変わらないので気楽にしていてください。

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2次元の極座標表示

まずは2次元の場合を見ていきましょう。数学や物理で使う一般的な座標といえば\(x\)軸と\(y\)軸が直交している直交座標系だと思います。もちろん化学においても使うのですが、直交座標系よりも極座標を使った方が分子の動きが簡単に数式で記述できる場合があり、そのときは極座標を用いることがあります。

化学が苦手な男の子
化学が苦手な男の子

高校で習った極座標は確か点の座標\((x,y)\)を\((r,θ)\)に書き換える方法だったと思うんですが同じものですか?

shiki
shiki

その通りです。\((x,y)\)を原点からの距離\(r\)とその時の動径と\(x\)軸のなす角\(θ\)を使って\((r,θ)\)と書き換える方法です。

変換公式とグラフ上での位置関係

2次元の場合の直交座標系\((x,y)\)から極座標\((r,θ)\)へと変換する公式は次のようになっています。高校での数Ⅰの三角比や数Ⅱの三角関数といった単元で学習しているはずなので見覚えがあると思います。

$$\begin{cases}x=rcosθ\\y=rsinθ\end{cases}$$

shiki
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この関係図を下に載せておきました。\(x\)軸と\(y\)軸のある座標平面と、動径\(r\)と\(θ\)であらわされた極座標の関係性がわかるかと思います。

各変数の変域

変換公式とグラフでの位置関係を確認したところで次に各変数の変域を確認しておきましょう。変数の変域は特に計算において今後いろいろな所で役に立ちます。例えば極座標上でのシュレディンガー方程式を解くときには規格化条件で積分をしなければなりませんが、その際に積分範囲を考えなければなりません。

shiki
shiki

積分範囲を間違えると計算の間違ってしまいますからね。この機会にしっかり変数の変域を考えてみましょう。

\(r\)の変域

\(r\)とは原点からの距離を表しています。座標系というのはすべての点を網羅しなければいけませんから、原点に非常に近い点も遠く離れた点も両方表さなければいけません。このため変数\(r\)の変域はつぎのようになります。

$$0 \leq r<\infty$$

\(θ\)の変域

次は\(θ\)についてです。グラフ図で見た通り、座標平面上のすべての点をあらわすためには、角度θは原点周りを1周するだけで充分です。このことから変数\(θ\)の変域は次のようになります。

$$0 \leq θ <2\pi

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3次元の極座標表示

さて2次元の極座標表示についての復習が終わったところで、次は3次元の場合を見ていきます。3次元の直交座標系において\(x\)と\(y\)、\(z\)の3つの変数を用いて1つの座標を決定したのと同じように、3次元極座標表示でも\(r\)と\(θ\)、そして\(φ\)の3つの変数で1つの座標を決定します。

変換公式とグラフ

shiki
shiki

まずは2次元の場合と同じように図を見てみましょうか。原点を中心とした半径\(r\)の球上の座標を考えています。

3次元での極座標系と直交座標系の位置関係がわかったところで、\(x\)座標、\(y\)座標、\(z\)座標からそれぞれ極座標系への変換公式も確認しておきましょう。

$$\begin{cases}x=rsinθcosφ\\y=rsinθsinφ\\z=rcosθ\end{cases}$$

shiki
shiki

数学や物理ではこの逆、つまり極座標から直交座標への返還も使うことがありますが、化学ではあまり使わないので覚えなくても大丈夫でしょう。この後はそれぞれの変数の変域を確認していきます。

各変数の変域

3次元の極座標の場合は変数が\(r\)と\(θ\)、\(φ\)の3つがあるのでそれぞれについて確認します。2次元の場合とは若干異なるところがあるので、しっかり見ていきましょう。

\(r\)は原点からの距離

3次元の極座標においても、\(r\)というのは原点からの距離を表しています。原点から遠く離れた点も、超近い点も表せるようにしないといけないため、\(r\)の変域は2次元の場合と同様になります。

$$0 \leq r<\infty$$

\(θ\)と\(z\)軸と関係大アリ

2次元の場合は\(θ\)といえば動径と\(x\)軸の正の部分とのなす角を表していましたが3次元になると少し違います。3次元における変数\(θ\)は動径と\(z\)軸の正の部分とがなす角を表します。このため、\(θ\)の変域は\(z\)軸の正の部分から負の部分までということになります。

$$0 \leq θ \leq \pi$$

\(2\pi\)まででないのは、\(0\leq θ\leq\pi\)のときと\(\pi\leq θ\leq2\pi\) のときが全く同じ範囲を示しているからです。

化学が苦手な男の子
化学が苦手な男の子

まだちょっとよくわかっていません。全範囲を表すことを考えれば\(2\pi\)まで必要な気がします。

shiki
shiki

\(z\)軸の符号で考えると良いかもしれません。\(z\)軸には当たり前ですが正の部分と負の部分しかありません。この2つを表すことが出来れば充分なのです。そしてそのためには\(\pi\)で事足りるというわけですね。

化学が苦手な男の子
化学が苦手な男の子

なるほど。\(\pi\)以降はもう1度同じ場所を通るだけですね。ということは最小限に変数の範囲を押さえるのであれば\(2\pi\)まではいらなさそう。

意外とチョイ難な\(φ\)

最後の変数\(φ\)です。\(φ\)は、変域自体は難しくないのですが何を表しているかがわかりにくいかもしれません。ちなみに私ははじめは「???」となった記憶があります。

\(φ\)は\(xy\)平面上でのお話です。空間中の点から\(xy\)平面に垂線を下ろし、その垂線と平面の交点と原点を結んだ線と\(x\)軸とのなす角を表します。文で書くとわかりにくいと思うので、\(φ\)に関する部分の図を載せておきますね。

ただし、\(xy\)平面上で考えていることから変域の考えは2次元のときと全く同じです。このことから変数\(φ\)の変域は下の式のようになります。

$$0 \leq φ \leq 2\pi$$

極座標は何の役に立つ?

このような面倒くさい座標変換までして、いったい極座標は化学で何の役に立つのでしょうか?これについては「量子化学を使って何を求めたいか」を考える必要があります。それでは極座標の活躍を見るために、まずは量子化学で考える現象についてみていきます。

量子化学は何を見たい?

これはあくまで私自身の意見ですが、量子化学とは原子や分子のエネルギーと分子軌道の様子を数値計算を使って詳しく見たいというのがモチベーションだと思っています。化学反応にはエネルギーが関与していて、どのような生成物ができるかは分子軌道が影響している。つまりこの2つが詳しくわかれば反応を予測できるじゃんということです。

軌道運動をする電子

一般的な原子のイメージでは電子は原子核を中心に回っています。化学反応には電子の動きが大きく関わっていますし、原子や分子の持つエネルギーにも電子は大きく関わっています。この電子の運動を表す式でもあればいろいろと計算できそうですよね。

直交座標系だと変数が多すぎる

しかし、この電子の円運動を直交座標を使って記述しようとすると、ちょっと電子が動いただけで\(x\)も\(y\)も\(z\)も変化してしまいます。その上、半径は一定という条件からどの変数もお互いに影響しあっているので勝手に変化できません。

shiki
shiki

連立方程式などを思い浮かべるといいと思います。変数は少ない方が方程式は解きやすいし、グラフは描きやすいのです。3つも変数があるとこの上なく扱いづらいんですね。

極座標だと変数が1つ減る

一方で、極座標だとうれしいことに変数が1つ減ってくれます。今の電子の運動の例だと、電子の座標を極座標で示せば、半径は一定となるので3つの変数のうち\(r\)は一定となるのです。電子の運動が実質\(θ\)と\(φ\)の2文字で書けちゃいました。

化学が苦手な男の子
化学が苦手な男の子

2文字で運動を表すことが出来れば、計算はかなり楽になりそうですね。グラフも描きやすそうです。

分子は伸び縮みもする

原子同士の結合にどのようなイメージを持っているでしょうか?もしかしたら分子模型のように固定された棒のようなイメージを持っている人もいるかもしれません。しかし、そのイメージは若干実態と異なります。

shiki
shiki

原子を表す球をばねでつないだものが適切な分子のイメージです。これは分子内でそれぞれの原子がお互いに振動していることに由来します。

結合が伸びたり縮んだりするような振動運動をしているのですが、この運動によるエネルギーというものがもちろん存在します。そのためこの振動もシュレディンガー方程式を解いてエネルギーを求めることができるのです。

直交座標だとまたもや扱いにくい

さてもうお気づきかもしれませんが、この振動運動についても直交座標だと扱いにくいことがあります。例えば直線分子だと軸上に分を置けば変数が1つで済むのですが、非直線分子だとどうしても2つ以上の変数を持つ原子が出てきてしまいます。これでは先ほどの電子の軌道運動と同じですよね。

極座標表示だとどの原子でも変数は1つ

極座標では原点からの距離を考えるので、振動の基準になる原子を原点に持ってきさえすればすべての原子が変数\(r\)のみで表現できたりします。素晴らしいメリットですよね。

shiki
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ちなみに振動運動には「結合の長さ」ではなくて、「結合の角度」が変化する振動もあります。この場合でも極座標を使えば多くとも\(θ\)と\(φ\)の2つで書けます。

回転まで考えられる

なんと分子は回転運動までしています。この回転運動についてもエネルギーを考えることができて、このときも座標軸の選び方によって計算の簡便さが異なります。

相変わらず直交座標は無理

回転運動については最初の軌道運動と同様です。\(x\)、\(y\)、\(z\)の3変数すべてがしっかり変化してくれるので複雑怪奇な式が出来上がってしまいます。

極座標だと2変数に!

ここでまたもや極座標の登場です。回転なので\(r\)は一定と考えることが出来ます。つまり3変数のうち、\(θ\)と\(φ\)の2変数で考えることが出来ます。なんだか極座標っていいところたくさんな気がしてきましたか?

化学と都合のいい座標軸

こんなにもメリットがありそうな極座標ですがなぜこんなにも相性がよさそうなのでしょうか?

shiki
shiki

電子や原子はそもそも円運動に近い運動がとても多いですし、回転や振動はエネルギー値がかなり違うので同時に扱うことはほとんどありません。そのため別々なら極座標を使った方が都合がいいことが多いのです。

ここまで極座標ばかりを見てきましたがもちろん直交座標を考えた方がよい場合もあります。例の1つ挙げれば、すでに扱った3次元箱型ポテンシャルの問題です。

この場合は変数はどちらの座標系を選択しても3変数です。しかし、積分計算を実行する際の微小体積が若干異なり、これは極座標の方が面倒です。直交座標なら\(dxdydz\)で済むのが、極座標だと\(r^2sinθdrdθdφ\)と少し複雑になります。

化学が苦手な男の子
化学が苦手な男の子

すいません。微小体積って何ですか?聞いたことがないのですが…

shiki
shiki

積分計算のときに一番左側についている記号のことです。ここでは詳しい説明は省きますが、使う座標系によって異なるので注意が必要です。

今日の要点

今回を通して言いたいことは、扱いたい問題によって適切な座標系を設定することがとても重要だということです。座標系が変わるだけで計算量に天と地ほどの差が出ることもあります。さて次は今回出てきた分子の振動運動を極座標を用いてシュレディンガー方程式を考えていきましょう。

  • 極座標は化学と相性がいい
  • 極座標を使うと円運動・振動・回転運動の計算が楽になる
  • 扱いたい現象によって座標をうまく設定する必要がある

参考文献


量子化学ー基礎からのアプローチ(真船 文隆)

詳解 量子化学の基礎(類家 正稔)

はじめての量子化学 量子力学が解き明かす化学の仕組み(平山 令明)

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