【量子化学】シュレディンガー方程式のわかりやすい解き方

量子化学

さて前回立式した1次元箱型ポテンシャルのシュレディンガー方程式ですが、今回は実際にこれを数学的に解いてみましょう。もし立式過程を忘れているなら前回内容をチェック!

shiki
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シュレディンガー方程式は数学的には「固有方程式」と呼ばれるものです。自分自身の微分形が元の関数の定数倍になっているような関数を求めるのですがこれがまた結構難しかったりします。笑

化学が苦手な男の子
化学が苦手な男の子

それでもわかりやすく解説してください。数学の復習も少し入れてくれると助かります…

shiki
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任せてください。かなりわかりやすくします。それでは解いていきましょう。

シュレディンガー方程式を解く

式変形と解となる波動関数の形

まずは立式したシュレディンガー方程式を見てみましょう。

$$-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2}\psi=E\psi$$

今回の1次元箱型ポテンシャルでは\(x\)軸のみしか考えません。方程式の変数が1文字しか出てこないので偏微分ではなく常微分で表します。要するに高校等でやってきたいわゆる「普通の微分」に書き換えます。

$$\frac{\partial^2}{\partial x^2}→\frac{d^2}{dx^2}$$

このような書き換えをすると方程式全体は次のようになりますよね。

$$-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{d^2}{dx^2}\psi=E\psi$$

つまり「2回微分すると元の関数の定数倍となるような関数を求めなさい」という問題になりますね。さてこのような関数が「三角関数」であることは簡単に想像がつくと思います。実際に微分を2回してみましょうか。

$$\frac{d^2}{dx^2}\sin x=\frac{d}{dx}(\cos x)=-\sin x$$

$$\frac{d^2}{dx^2}\cos x=\frac{d}{dx}(-\sin x)=-\cos x$$

そうすると\(sin x\)も\(cos x\)の2階微分もそれぞれ元の関数の\(-1\)倍となっていますよね。今回は\(sin\)関数を使って考えてみましょう。

shiki
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\(\frac{\pi}{2}\)だけ平行移動すると重なることから本質的にはどちらを使っても同じです。ただ\(sin\)関数を使って計算している本が多いことからここでも\(sin\)関数を使っていきます。

このシュレディンガー方程式で求める波動関数を以下のように置きます。\(sin\)関数であることは分かっているので振幅や位相に文字を置いています。

$$\psi=A\sin{bx}$$

\(A\)と\(b\)はそれぞれ未定係数なのでこれからこの2つを求めていきます。

超重要な2つの条件~境界条件と規格化条件~

シュレディンガー方程式では主に2つの条件が必要です。

・境界条件

・規格化条件

それぞれを簡単に説明すると、境界条件とは「粒子が存在するであろう領域の端っこにおける波動関数は\(0\)に接続していないとおかしいよね?」という意味であり、規格化条件とは「全領域を探せばどこかに粒子は必ずいるよね?」ということです。波動関数の2乗は粒子の存在確率を示すので全領域の確率を足せば\(1\)にならなければならないということです。

境界条件

まずは「境界条件」から考えていきましょう。

前回の図から粒子が存在できる範囲の端っこは\(x=0\)と\(x=L\)なのでそれぞれを波動関数の式に代入すると下の2つの式が成り立ちます。

$$\psi=A\sin{(b\times 0)}=0$$

$$\psi=A\sin{(b\times L)}=A\sin{bL}$$

初めの式はすでに\(0\)となっているのでもうこれ以上何かする必要はありません。2番目の式はどうでしょう?これは\(0\)とは限らないので\(b\)の値を考えてみましょう。

$$Asin{bL}=0$$

が成り立ち、これを満たすのは()の中身が整数\(n\)を使って

$$bL=n\pi (n=1,2,3…)$$

となっていなければなりません。よってこれらの条件から\(b\)の値は\(n\)を使って下のようにあらわされることがわかるかと思います。

$$b=\frac{n\pi}{L} (n=1,2,3…)$$

規格化条件

次に「規格化条件」について考えていきましょう。これは波動関数の2乗を\(x=0\)から\(x=L\)まで積分した結果を考えます。

shiki
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つまり\(x=0\)から\(x=L\)までの領域で粒子を見つけ出す確率を考えるということです。今回はその範囲中のどこかには必ず粒子が存在するので結果は\(1\)となるはずです。

$$\int_{0}^{L}|A\sin{\frac{n\pi}{L}x}|^2dx$$

shiki
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波動関数とは通常は複素関数なので共役な複素数を考えないといけないのですが、今回は例外的に複素数が含まれていないのでそのまま2乗します。

$$=|A|^2\int_{0}^{L}\sin^2{\frac{n\pi}{L}x}dx$$

$$=|A|^2\int_{0}^{L}(\frac{1}{2}-\frac{1}{2}\cos{\frac{2n\pi}{L}}x)dx$$

$$=|A|^2\left[\frac{1}{2}x-\frac{1}{2}(\frac{2n\pi}{L})^{-1}\sin{\frac{2n\pi}{L}x}\right]^L_0$$

$$=|A|^2\frac{L}{2}$$

この結果は\(1\)とならなければならないため(規格化条件)

$$|A|^2\frac{L}{2}=1$$

これより定数\(A\)の値は次のようになります。

$$A=\sqrt{\frac{2}{L}}$$

導出結果

さて長かった計算もここまでです。ようやく求めたかった波動関数の全貌が見えてきましたね。前回設定したような1次元箱型ポテンシャル中にある粒子の波動関数は、今回求めた\(A\)と\(b\)を使って

$$\psi=\sqrt{\frac{2}{L}}\sin{\frac{n\pi}{L}x}$$

となります。

今日の要点

  • 波動関数は固有方程式と呼ばれる方程式を満たす関数
  • 波動関数には「境界条件」と「規格化条件」の2つが超重要
  • 1次元箱型ポテンシャル中の波動関数は意外と単純な形

さてこんなに苦労して導出した波動関数なのですが。この式は一体何を表しているのでしょうか?次回は波動関数の意味やここから導き出されるものについてみていきましょう。


参考文献

量子化学ー基礎からのアプローチ(真船 文隆)

詳解 量子化学の基礎(類家 正稔)

はじめての量子化学 量子力学が解き明かす化学の仕組み(平山 令明)

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